近年は毎年毎年猛暑で、秋も残暑が続き、秋らしくなるのが遅くなっている気がします。
魚を扱う者としては、やはり秋になると魚が美味しくなるので待ち遠しいのですが、やっと少し涼しくなってきました。
さて、今回季節が秋!ということで、秋に魚が美味しくなる理由と、逆に春はどうなの?というところを書いていきます。
秋は、寒い冬に備えて「荒食い」をする時期。
人間は「食欲の秋」と言いますが、それは魚も同じかもしれません。
というのも、魚は厳しい冬を越すために、寒さから身を守り、熱を生み出す脂肪が必要になります。
そこで、まだ水温がそれほど低くない秋のうちに、たっぷりと栄養を取って脂肪を身に着ける必要があり、沢山の餌を食べるようになります。
これが秋の荒食いとよばれる行為で、大型魚も小型魚も、比較的浅い水深を中心に活発に活動して捕食活動をするのです。
これによって、魚に脂がついて、身が美味しくなるわけですね。
冬に向けて美味しくなる魚は、沢山ありますが代表的なのは寒ぶり、寒さわら、鯖などでしょうか。
ですが、ほかにも真鯛なども秋は美味しい季節なのです。
春も魚は豊漁!でも、お腹に栄養がいく!?
ということで、秋から冬にかけて魚は美味しくなるのですが、同じような気温の春はどうでしょうか。
実は春はいろんな魚が「よく獲れる」季節です。
真鯛、ヒラマサ、アオリイカ、ぶり、サワラなどなど。
これは実は、全て「産卵期」の荒食いと産卵行動による集結に起因します。
秋は、冬を乗り越えるために魚は栄養をつけましたが、春は子孫を残すために栄養を取るわけです。
どちらも栄養を取るのに変わりはないのですが、秋は身に栄養を付けるのに対し、春は卵や白子に栄養を付ける、という訳です。
だから、春の真鯛などはとても大きく立派なものが多く獲れる(釣れる)のですが、秋と比べると身質はやや落ちると感じています。
その分、真子や白子が美味なんですよね。
初ガツオと戻りガツオ。
ちなみに、春と秋でそれぞれもてはやされる魚と言えばカツオがあります。
春から初夏が「初ガツオ」で、秋から晩秋が「戻りガツオ」ですね。
初ガツオは、脂は少なくさっぱりとして、でもモチモチ食感が人気。何より「初物好き」の日本人に縁起物として珍重されます。
逆に戻りガツオは、冬に向けて水温の低い海域で、たらふくエサを食べているので、まるでトロ?というくらいに脂がのって、最高の食味になります。
秋はつまり、魚に脂が乗ってくる時期という訳です。
ただ、魚は季節ごとの味わいの違いを理解して、食べ方次第で美味しくなるもの。
ぜひ季節を感じながら、様々な味を楽しんでもらいたいと思います。
という訳で、今は秋の始まりですが、これからどんどん鯖もほかの魚も脂が乗ってきます。
ぜひ、当店にもお立ち寄りくださいませ。